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☆短編妄想小説☆「本日休講」〜雪の吐息(後編)

2013年01月16日 21:30

続きです(^^)

前編は→コチラ


1:16notti


雪の小川の小道。
そこかしこにある雪の風情を楽しみながら、ボクたちはゆっくりゆっくりと歩き、
いつもの倍の時間をかけて、私鉄の駅前まで来た。
そこでボクたちは昼食をとった。
小さなスパゲッティ屋。
そう、パスタではなくスパゲッティ。
イタリアンではなくスパゲッティ。
学生たちの間ではおなじみの店だった。

店内は決してこぎれいとは言えないが、バンガローのような落ち着いた雰囲気。
マスターの趣味だろうか。壁には雪山登山のスナップ写真が何枚も貼ってあった。
ボクは和風納豆スパ、大本は黒胡椒がよく効いたカルボナーラを食べた。
冷えきった身体がじんわりとあたたまってくる。

「おいしい?」

「おいひいね。はふっ」


1:16notti02


食後のコーヒーを飲みながら、ボクたちはとりとめのない話をした。
授業のこと。好きな映画のこと。音楽のこと。食べ物のこと。
漠然とした将来のこと・・・


2〜3時間は過ごしただろうか。ボクたちは店を出た。
駅に着くと、電車は行ってしまったばかりのようだった。
ここの私鉄は単線で、本数が極端に少ない。


「やれやれ、次はいつ来るかね〜」

「ねえ、ろぼっち」

「なに?」

「雪だるまつくろ」

「へ?」

「駅の向こうに公園があったでしょ。そこで」

「ああ、そういえばあったね」

「ね、行ってみよ」

「うん」


ホームの下をくぐるような地下通路を抜けると、公園に出た。
運動場も兼ねているのだろうか。広くて平らなグラウンドは一面雪に覆われていた。


「おお、意外に広いな」

「ほんとだね。それにまだ真っ白!」

「うん、ここも誰もいないね」

「ぅわーーい」

大本は駆けだした。

まるで綱から解き放たれた犬のようだった。
真っサラな雪の上を、飛行機のように両腕をひろげ、駆けている。

「すごーい、雪きれー」


(大本、予備校時代からすっかり明るくなったな・・・)



ひと回りして戻ってくると、大本はカバンから黒いカメラを取り出した。


「カメラ持ってきたの? え、それ8ミリカメラじゃん」

「うん、映研の関くんから借りてたの。今日返すつもりだったんだけど」


そう言うと、大本はボクの方にカメラを向けて回し始めた。

ジーーーーーーー


1:16notti03


「ちょっ、ばか、やめろよ」

「ふふ、いいのいいの、ろぼっち、歩いてみて、雪の中」

「ええ? いや、いいよボクは。そうだ、ボクが撮ってやるよ。貸して」

「うんいいよ、はい。このレバー引くだけだから」


大本は再び、雪のグラウンドに飛び出していった。


8ミリカメラのファインダーをのぞきながらボクは大本を追った。
冬の昼間は短い。
夕方と呼ぶにはまだまだ早い時間だが、あたりはうっすらセピアがかって見えた。
低い太陽の光を浴びて、雪原を駆ける大本。
ファインダー越しに見る大本は、わけもなく切なかった。


1:16notti04



大本は手袋をはめた手で雪をつかみ、おにぎりの要領で雪玉を作ると、
それを転がし始めた。
雪玉はみるみる大きくなっていった。


「よいしょ、よいしょ」

「おお、どんどん大きくなるね」

「へへ、上手でしょ」

大本は楽しそうに、一心不乱に雪玉をころがしていた。

「よいしょ、よいしょ♪」

白い息。赤みを帯びる頬。

「はあ、はあ、ふう、・・・はい、交代! 今度はろぼっち、ころがして!」

「ああ、うん」

大本はカメラをボクから奪いとると、ボクに向けた。

「おお、いいですねー、ろぼっち選手。その調子その調子」

「ばか、からかうなよ・・・どうでもいいけど、これけっこう重いな」

「でしょ。うふふ、大きいのが出来たら、その小さいの、上に載せて・・・よし、じゃあ交代」


大本はまたカメラをボクに押しつけると、まわりから、木の枝や石ころを拾い集めてきた。

それを雪だるまの顔に当てがいながら、目鼻を決めている。

時折、こちらを向いてピースサインをしたりしてふざけていた。


「なあ、もうカメラ止めてもいいかな。もったいないでしょ。フィルム」

「え〜、だいじょうぶだよ」

「いや、だって結構高いでしょ。8ミリフィルム」

「だいじょうぶだって」

「なんで」

「フィルム入ってないから」

「は?」


大本はこちらに来て、8ミリカメラの横のフタをカパっと開いた。
カラッポの内部。カラカラと駆動音だけが鳴っていた。

「ほらね」

ニコッと笑った。

「なんだよ〜。ちゃんとかまえて損したよ〜」

「だまされた? いえーい」

「こいつ・・・」

「いいから、続けて・・・撮り続けて」

「え?・・・」


大本は雪だるまの顔作りに戻っていった。

ボクはふたたびカメラをかまえた。

ファインダー越しの大本。

くるくると変わる楽しそうな表情。

まるで映写機で映し出された、コマ送りの画のようだった。


「できたー!」

「おお!」

「どう? ろぼっち!」

「いいね」

「どこが?」

「笑った口元と、その八の字の眉毛が。はははは」

「えー、そこー?」

「やっぱり、雪だるまも作った人に似るのかね、あははは」

「そーかなー、わたし、ろぼっちくんを見ながら作ったんだけど・・・ま、いっか!」


そうなの?! と続けようとしたが、何故だか胸がチクリとして、ことばが出なかった。




たとえば今、この瞬間はいつまでつづくのだろう。
この雪だるまを、永遠に溶かさない秘密の薬はないのだろうか。


健気に雪だるまの顔をつくろい続ける大本を見ながら、
ボクはそんなバカなことを考えていた。



空っぽの8ミリカメラをまわしながら・・・






☆短編妄想小説☆「本日休講」〜雪の吐息(おわり)






1:16notti05




1:16notti06



※この物語はフィクションであり実在の人物とは一切関係がありません♪


コメント

  1. おとわ しゅな | URL | QFk3YRjk

    じわじわ

    いいですね~むずむずしますね~(^^
    でも何気ない情景が、感情がじわじわと伝わってきます。ロボッチのこの淡い感情が、解き放たれる事はあるのでしょうか・・・?

    続きを期待させるような構成ですが、この小説には終わりは無いほうがいいのかな、
    とも思います。

  2. PPPHIVE | URL | -

    しかし

    BcL/マカロニのリリース日に合わせて
    この画像を前後編で持ってくるなんて高等技術…
    それを一言も言わない潔さ!
    (あ、代わりに言っちゃった)

    もうブログやめていいですかね~(笑)
    降参しましたm(__)m

    前記事レスにある通り、何かが始まる前、と言うのが
    一番幸せな時間です…(遠い目)

  3. smile | URL | -

    PPPHIVEさんのコメ見ないと気付きませんでした。
    く~にくいね~やらしいね~流石ですね~(^^)

    年末にロケ地巡り行ったばかりなので
    なおさら情景が浮かびます。
    白黒を使ってくるあたりも
    雪景色を想像させてさすがです。


    カラの8ミリってのがまた淡い感じで良いですね~
    青春映画のようです。

    こうゆうの好きですw

  4. ロボトリア | URL | -

    >おとわ しゅなさん

    コメントありがとうございます。

    >いいですね~むずむずしますね~

    実際の出来事ってむずむずの連続ですよね。 あ、これ実際の出来事じゃなかった(笑)

    >ロボッチのこの淡い感情が、解き放たれる事はあるのでしょうか・・・?

    煮え切らない男ですねー、ろぼっちくんは。読んでいてイライラします←

    >この小説には終わりは無いほうがいいのかな、

    そうですね。ボクもそう思います。
    時が止まったサザエさんみたいな世界ですね(笑)

  5. ロボトリア | URL | -

    >PPPHIVEさん

    コメントありがとうございます。

    >BcL/マカロニのリリース日に合わせて
    この画像を前後編で持ってくるなんて高等技術…

    はっ

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    (↑どうした? 考え中…考え中…)

    ささささすがPPPHIVEさん。すべてはお見通しですか!←
    この記念すべきリリース日までに記事を仕上げるのには苦労しましたよ〜←←
    あっさり暴露されちゃいましたね、PPPさんにはかなわないや♪←←←

    >もうブログやめていいですかね~(笑)

    すいません。それはボクのセリフのようです。
    ボクがリリース日を記憶しているのは、bitterとsweetだけです(おぼえやすいからw)
    カエレ、ってゆわないでね(笑顔)

    偶然って恐いですね(爆)

  6. ロボトリア | URL | -

    >smileさん

    コメントありがとうございます。

    >く~にくいね~やらしいね~流石ですね~(^^)

    はい、ボクはいやらしい男です。神様ありがとう←

    >年末にロケ地巡り行ったばかりなので

    そうでしたか(^。^) 東京は景色の移り変わりが早いので、
    機会があれば行っておいて損はないですね。

    >白黒を使ってくるあたりも
    雪景色を想像させてさすがです。

    おお、意図を汲み取っていただいて嬉しいです(^^)
    あのマカロニのセピアは印象が強烈ですから、
    どうしてもそちらに引っ張られてしまうと思ったので。

  7. P120548 | URL | -

    完全に意表を突かれました

    早速リクエストに応えて頂き、誠にありがとうございます。

    まさか、1月中に読めるとは!
    完全に予想の斜め上突かれました!

    夏ののっちもいいけど、冬ののっちももっといいですねぇ。
    儚く溶けていく雪。そしてろぼっちの淡い恋心。ああふつくしい。

    これからも文豪の名作に期待しています!♡

  8. ロボトリア | URL | -

    >P120548さん

    コメントありがとうございます。

    >まさか、1月中に読めるとは!

    ほんとですね〜。ボクもこんなに早く書けるとは思いませんでした(*^^*)
    P120548さんの顔も思い浮かびましたよ(お顔を知りませんがw)

    >夏ののっちもいいけど、冬ののっちももっといいですねぇ。

    雪の中の女の子のカワイさは5割り増しって言いますからねー(笑)
    スキー場では要注意です←

    >これからも文豪の名作に期待しています!♡

    ちょ、文豪とかヤメテクダサイw ♡だけ受け取っておきます(笑)

  9. mtst | URL | WU..WH7.

    予想外

    ニヤニヤじゃなくてウルウルでした。
    PPPHIVEさんのコメントを拝見して「マカロニ」をBGMに再度読み返してみたりして。
    ろぼっちくんは「これくらいの感じで多分ちょうどいいよね」って気持ちなんでしょうか。
    いい年なのに何でしょうこの切ない気分…(笑)

  10. ロボトリア | URL | -

    >mtstさん

    コメントありがとうございます。

    ウルウルでしたか! それはmtstさんが感受性豊かな人だからですね。
    「マカロニ」の季節、どうしても切ない方向に物語が向いてしまいます。
    ニヤニヤ成分足りなくて不満な人もいるかも(笑)

    >ろぼっちくんは「これくらいの感じで多分ちょうどいいよね」って気持ちなんでしょうか。

    きっとそうなんだと思います。
    先のことはわからないけど、今の、この瞬間を大切にしたいと思ってるんですかね。

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