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聖なる夜のものがたり(再)

2011年12月16日 20:07

夜の町

ドラマに再放送があるなら、
ブログに最掲載があってもいいじゃないか。
グラスの底に顔があってもいいじゃないか(世代限定)。

という事で、去年の11/24に書いた短編物語の再掲です。

ちょっと恥ずかしいですが、
この辛気くさい雰囲気、自分的には割と気に入ってます。
要するに自己満足ってヤツです(笑)


未読の方で読んであげてもいいわよ、という方は読んでやってください。
若干、加筆修正しています。

け、決して手抜きではありません。



聖なる夜のものがたり(ディレクターズ・カット)




「ちっ、しけてやがんな」

枯れ葉舞うコンビニの駐車場で、男は住宅地図にまた×印を加えた。
良二。52歳。
新聞勧誘の仕事は始めてまだ間もない。
なんの実績も資格も持たない中年男に、今の時代、
まともな再就職口など、あるはずもなかった。
会社は倒産した。
長引く不況に追い打ちをかけるような出来事が、今年は起きた。

遅い昼食のおにぎりとコーヒーを胃に流し込み、つぶやいた。

「また、明日がんばってみるか…」

疲れきった良二は、前かごに山積みにされた景品に目をやり、ため息をつくと、
原付にまたがり、家路へと急いだ。


いちばん安い物件を紹介してください…
そう注文して探し当てた築40年の木造アパート。

「ただいま…」

「あ、おとうちゃん、お帰り!」

来年、小学校への入学を控えたひとり娘、美雪が元気な声で応えてくれた。
ふたり暮らし。
妻とは2年前に離婚した。
歳の離れた若い妻は、男をつくり、家を出て行った。
誰のせいでもない。自分に甲斐性がなかった…
良二はそう思うことにした。

「また、ひとりで遊んでたのか」

「うん、ぱふゅーむごっこ」

あどけない笑顔で美雪は答えた。
この笑顔が良二の唯一の救いだ。

美雪の寂しさを紛らわすために、
良二は自分の持っていたPerfumeのDVDを与えた。
美雪は夢中になった。
部屋には雑誌の切り抜きやポスターが、あちこちに貼ってある。

美雪とは血がつながっていない。

妻の連れ子だった。
娘を引き取ることに妻は反対しなかった。

「かしいかです。あーちゃんです。のっちです…」

たったひとつのリカちゃん人形を、立ち位置を変えながら、美雪は演じさせた。

「さんにんあわせて、ぱふゅーむです!」

「Perfumeは好きかい?」

「うん!」

「どうして?」

「あのね、かわいくてね、かっこよくてね、そいでね…やさしいから」

見知らぬ土地に、逃げるようにやって来たふたり。
頼る人間もいない。

「おなか、すいただろ」

「うん!」

良二は、ありあわせの材料で夕食の支度をはじめた。


………………


ぽつぽつと契約も取れるようなってきた頃には、冬も本番を迎えていた。
街にはイルミネーションがあふれ、
ケーキ屋が店先販売で声を枯らしていた。

「そうか、今日はクリスマス・イブか…」

良二はいちばん小さなケーキを買い、前かごに載せた。

「美雪、待ってろよ…」

くるりと原付をターンさせた、

そのとき…

トラックのクラクションが、けたたましく鳴った。
ヘッドライトの明かりが良二の顔を照らした。

ケーキは道路に飛び散った。


………………



「おとうちゃん、遅いなー。ねー、のっち」

こたつに入って、ひとり遊びをしているうちに
いつしか美雪は眠ってしまった。




「美雪ちゃん」

「……ぇ?」

「美雪ちゃん、起きて…」

眠い目をこすりながら、美雪はふと見上げた。

「あ!」

「こんばんは。私たちPerfumeといいます。
今日は美雪ちゃんに会いにやってきちゃいました~」

「え~、ほんとう!」

「はい、まずはココアを召し上がれ」

マグカップに入ったホットココアを、
美雪は冷えきった両手で包み込むように受け取った。

「あったか~い」

3人に見守られながら、ゆっくりと飲み干すと、
胸の真ん中から温かさがじんわりと広がっていった。

「美雪ちゃん、外に出てみようか」

促されるように外にでて、空を見上げると、美雪は息を飲んだ。
ブオン、ブオン、ブオンという、不思議な音。
大きな飛行船のような、宇宙船のような、見たことも無い飛行物体が空中に浮かんでいた。


飛行船


窓のようなところに人影を見つけた。
笑いながら、こちらに向かって手をふっている。

「あ! おとうちゃん!」

「美雪ちゃん、今日はお父さんとふたり、ゆっくりと空の旅を楽しんでね」

そう言って、Perfumeの3人は美雪を包み込むように、そっと手をかざした。
すると美雪の背中に蝶のような羽が生え、フワリと体が浮いた。
そしてキラキラと光る粉を振りまきながら、空へと舞った。
やがて周囲は明るくなり、夜とは思えぬ光の洪水の中、
美雪は漂い、飛行船にたどり着いた。

「おお、美雪、よく来たな」

「おとうちゃん!」

飛行船はゆっくりと進み始め、その高度を上げていった。
ぐんぐん、ぐんぐん。高く、高く。
眼下に見える街並。
家々の灯りや、明滅するイルミネーションは、まるでミルキーウェイ。

「わ~、きれい!」

「うん、きれいだな」

「あのアパート、美雪のおうち?」

「うん、そうだよ」

「ちいさいね」

「ああ、そうだな」

「おとうちゃん」

「うん?」

「美雪ね、とっても幸せだよ……とっても」

「…そうか」


飛行船はふたりの幸福な気持ちに呼応するかのように、その放つ光を強めていった。


まるで太陽のように。





光




………………






















「美雪」









「美雪」



「美雪、起きなさい」

「…ん、うん……え?」

「こたつで寝てちゃだめじゃないか。風邪ひくぞ」

「お、おとうちゃん?」

「なんだ、寝ぼけているのか。
おとうちゃん、ケーキを買い直しに行ってたら遅くなってしまったんだ。
悪かったな。ごめんな。」

「ううん、大丈夫。…あのね、美雪ね、ぱふゅーむのおねえちゃんたちに会ったよ」

「え~、そうか、それはよかったなあ。さあ、ケーキを食べよう」

「うわーい」

美雪はケーキにむさぼりついた。
気がつけば腹ぺこだった。

「おいしいかい?」

「うん!」

「そうか。ゆっくりお食べ」

「うん。…あのね、おとうちゃん」

「うん?」

「美雪ね、とっても幸せだよ……とっても」

「…そうか、おとうちゃんも幸せだ」

「ほんとう!」

「ああ、幸せだ。ほんとうに…」

良二はそれ以上言葉が続かなかった。
この瞬間が永遠に続けばいいのにと願った。


……



翌朝、仕事に出かけようと玄関の扉を開けると、良二はあるものを見つけた。

「なんだ? このマグカップは……」

怪訝な表情でそれを手にとると、フッと笑みを浮かべた。

「P…er…ふふふ、まさかな……」



良二は部屋に戻り、そのマグカップを美雪の枕元にそっと置いた。





おわり







ちゅいんくる





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コメント

  1. runrun1006 | URL | v8QjPvAY

    読んであげました(笑)

    すみません。上からのタイトルで<(@^_^@)

    一度読んでから、昨年のを読み返しました。ロボッチさんが何処に手を入れてるかをチェックしに(笑)
    最後のマグカップ、猫さんのコメント欄に書いたコメントが採用されてるんですね。なるほどぉ~と一人で感心してました。
    昨年同様騙されそうになった読者より

  2. セラミックおじさん | URL | -

    わざわざ、私だけの為に再掲してくださってありがとうございました(笑)

    すみません 勘違いタイトルで


    幻自在の前髪魔導師  暴言天然ゆるふわ馬の尻尾姫さま  髪噛み男前美少女こども

    三人のゴースト の物語

    心が温まります 今からココアを飲むことにします

  3. ロボトリア | URL | -

    >runrun1006さん

    コメントありがとうございます。

    え~、読み比べたんですか? まさかそんな人がいるとは!(笑)
    恥ずかしいじゃないですか(*^^*)

    皆さんのコメントを読んだり、返信しているうちに
    いろんなアイディアが浮かぶことがありますね。
    マグカップのくだりはPerfumerさんにも好評?だったので、
    いつか書き直したいと思っていました。

  4. ロボトリア | URL | -

    >セラミックおじさんさん

    コメントありがとうございます。

    >わざわざ、私だけの為に再掲してくださってありがとうございました(笑)

    え? いや、そんなことはアレですけど(;^_^
    セラミックおじさんさんの顔も浮かんだことは事実です。
    お顔を知らないですけど(笑)

    というか、セラミックおじさんさんがこの時作ってくれたCG動画も貼ろうとしたんですけど、
    削除されていたので、あきらめたんですよー。

  5. mtst | URL | WU..WH7.

    また泣いてしまうやーつ

    去年読んでて話が分かっててもだめですね。
    最初のくだりで自分を良二さんにダブらせてしまうからでしょうか。
    はぁ~、ダメですわ(笑)

  6. ロボトリア | URL | -

    >コメントありがとうございます。

    コメントありがとうございます。

    もう一度読んでいただき恐縮です。
    どうも自分は、浮かれポンチなクリスマスよりも、
    こうした貧乏くさいエピソードを好んでしまうんですね。
    我ながらキモいな~と思いつつ上げています(笑)
    共感いただき嬉しいです。

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