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空手道ビジネスマンコース@亀戸支部~最終回

2011年04月25日 15:32

■登場人物のおさらい

敏夫
通勤電車から毎日眺めていた憧れの空手少女、彩子に吸い寄せられるように
ビルの前まで来てしまい、思わず入門してしまった中年サラリーマン。
彩子と空手との出会いによって何かが変わる。


大木彩子
香心会館亀戸支部指導員。
敏夫の憧れの心優しきヒーロー?
西牧綾香との決戦に向けて稽古を積む。


樫野美香
ニューヨーク旅行中に暴漢に襲われそうになった所を彩子に救われる。
以来、道場に入門し自分に自信を取り戻す。
打倒、西牧綾香を目指す彩子のためにスパーリングパートナーとして
ニューヨークより帰国。


西牧綾香
広島でキッズ専門の道場を任されている。
大会で勝つのは、様々な事情を持った子どもたちに笑顔と勇気を与えるため。
彩子の幼なじみでもある。


イワイ
何かと敏夫の世話を焼いてくれるお調子者の道場生。
かつては広島の西牧道場に在籍。
亀戸支部で黒帯取得の10人組み手を感動的に完遂させた。


KIMIKO MIZUNO
香心会館館長。20歳の時に新しい空手像を追求するために単身渡米。
「香水の香りのようにやさしく広がる強さの環」をコンセプトに
誰にでも親しめる香心流空手を生み出す。
日本での普及促進のため、一番弟子、大木彩子を派遣。


第1話は→コチラ 第2話は→コチラ 第3話は→コチラ
第4話は→コチラ 第5話は→コチラ 第6話は→コチラ
第7話は→コチラ 第8話は→コチラ


それではお待たせしました。
いよいよ最終回です!



第4回香心会館オープントーナメント全日本大会。

全国から流派を超えて様々な選手達がここ日本武道館に集結する。
香心会館のコンセプトである“香水の香りのようにやさしく広がる強さの環”
この、空手を誰にでも親しめるものにしようとしてきた館長KIMIKO先生の発想は、
因習的な空手界に風穴を空けた。

それまで空手と縁のない様々なバックボーンを持つ人々をも多く巻き込み、
大会は回を重ねるごとに参加者を増やしていった。
他では見られないユニークな大会は格闘技ファンの心も掴み、
今では日本武道館を満席に出来るほどになった。

過去3回の大会の女子の部においては、西牧綾香が優勝を重ねている。
そして同じく3回ともに準優勝は大木彩子である。

シード選手であるこの二人は、今大会においても順当に勝ち進み、ついに決勝まできた。

そう、ついにその時がやってきたのだ。

1万人の観客の視線は武道館の中央の二人に注がれた。
相対する西牧綾香と大木彩子。
場内は不気味なほど静まり返っている。

決勝に至るまでの二人の戦いっぷりは、
これまでにも増して鮮やかなものだった。
他の選手とは一線を画していた。
まさに別次元だった。
この二人が戦ったらどうなってしまうのだろう。
観客は固唾を飲んで見守っていた。
亀戸支部の道場生たちも、もちろん応援に駆けつけている。

(彩子先生。勝ってください! 先生なら勝てます!)
敏夫は祈っていた。

さえないサラリーマンだった自分を変えてくれた彩子先生。
敏夫は彩子がまるで自分の存在理由のような気がしていた。


「お互いに、礼!」

(今度こそ、私は勝つ!)
彩子は一瞬、カッと目を見開くと、再び目を閉じた。

綾香はポニーテールの結び目を確認しながら、
まるで散歩の途中であるかのような自然な表情でその場に立っている。

「始めい!」

主審の合図とともに決勝戦は始まった。

彩子が再び目を開けたその時、目の前の綾香が消えた。

「?!」

「先生! 上!!」
イワイが叫んだ。

驚異的な跳躍力で綾香は彩子の頭上高く舞っていた!
空中回し蹴りを放つ綾香。
スッと身を引く彩子。
綾香の足が彩子の頭をかすめる。

「危ない!」

シュバッ!

パラパラと彩子の髪が床に落ちた。
カミソリのような綾香の蹴り足。
彩子は一瞬で理解した。
これまでの綾香の血のにじむような努力を。

(わかったよ。あ~ちゃん!)

間髪入れず今度は彩子が跳んだ。
空中で体をひねり、バックスピンキックを放つ。
鼻の先、紙一重でかわす綾香。
彩子が着地するや怒濤の攻撃が始まった。
パンチ、キック、カウンター、コンビネーション・・・

「お~~!!」
目にも止まらぬ攻撃の応酬に観客がどよめいた。

次々に繰り出す技の数々。
2~3手先を読む受け技の数々。

「美しい・・・」
敏夫がつぶやいた。

「そうでしょう。技もあそこまで磨き上げると本当に綺麗ですよね」
イワイも同調した。

「空手は芸術なのか・・・」
そんな言葉が敏夫の口をついて出た。

その時。

「会話してる・・・」
それまでじっと試合を凝視していた美香が口を開いた。

「え?」

「ふたりとも、技で会話してるわ」

「そんな事があるんですか!」

敏夫は目をまるくして、戦う二人をじっと見つめたがよくわからなかった。
彩子や綾香、美香のレベルにならなければ辿り着けない境地なのだろう。


(彩子ちゃん、今日は本気だね! 私、この時を待っていたよ)

(あ~ちゃん、ごめんね。私、今まで思い込んでいたの。
私はあ~ちゃんにはかなわないって。子どもたちの笑顔のために戦うあ~ちゃん、
ほんとに眩しかったんだ。あ~ちゃんは私の太陽。
あ~ちゃんの笑顔を奪いたくないって、勝手に思ってたんだ。でもそれは間違いだった。
私には私のプライドがある。私にも大切な生徒達がいっぱいいる。
だから全力で戦う。それが、あ~ちゃんに対する礼儀でもあるから・・・)


(ほ~よ、あんた気が付くのが遅いんじゃ。
私、今、最高に楽しいよ! 強くて優しいあんたと戦う事が出来て・・・)


二人の技の応酬はその間も絶え間なく続いている。

(ね~、あ~ちゃん。覚えてる? 私たちがまだちっちゃかった頃のこと。
私、いつも男の子とばかり遊んでいて、ある日、調子にのって男の子を泣かしちゃったでしょ。
その時、あ~ちゃんが私の耳を引っ張って、私を注意したよね。
あんたはやんちゃだけど、ほんまは優しい子じゃけん、人を泣かしたりしちゃあいけん!って。
その言葉を今までずっと大切にしてきたよ。)


(ほんまに~、それを聞いて私も嬉しいよ。
今日のあんたはその優しさを強さに変えているんじゃね~。ほんまに立派よ)


(てへっ)

(でもね、感謝するのは私の方なんよ)

(え?)

その刹那、綾香は再び宙に舞った。
彩子も跳ぶ。
空中で二人が交差した。

バチバチバチ!

白い発光体のようなものに包まれ、
二人に何が起こったのか、わからない。

ダンダン!
同時に着地する二人。

綾香のポニーテールがはらりとほどけた。

「どっちだ!」

彩子が・・・グラリと体勢を崩した。

「先生!」叫ぶ敏夫。

彩子はそのまま仰向けに、大の字になって倒れてしまった。

静まりかえる日本武道館。

「一本!」

主審の声が静寂を打ち破った。

「ワーーーー!!!」

場内は割れんばかりの歓声と拍手に包まれた。

「二人、中央へ」

主審に促され、ハッと我に帰り起き上がる彩子。

「勝者、西牧! お互いに、礼!」

少し朦朧とする彩子に綾香は握手を求めた。

「彩子ちゃん、ありがとう。今日の彩子ちゃん、本当に強かったよ!」

「えへへ、あ~ちゃん、ありがとう。でも私やっぱり勝てなかったね。
本気を出しても勝てなかったよ。あ~ちゃんにはやっぱりかなわないよ」

「違うんよ!これはあんたの勝利でもあるんよ!」

「え?」

「私がここまでこれたのはあんたのおかげなんよ。
亀戸道場を一人で懸命にもり立てて頑張るあんたの姿、ずっと見とったよ。
イワイさんや美香ちゃんをはじめとして、素晴らしい道場生と一緒に頑張る彩子ちゃん・・・
それを見て私も毎日毎日、あんたを目標に頑張ってきたけん、ここまでこれたんよ。
ありがとう。ほんまにありがとう」

「・・・あ~ちゃん」

彩子は両手で顔を覆うとその場にしゃがみこみ、
泣き崩れてしまった。

「先生!」「彩子先生!」「彩子ちゃーん!」

亀戸道場の生徒達が叫んでいる。

「ほら、いつまでも泣いとらんとみんなの所へお帰り!」

「・・・うん!そうだね。私がいられるのも、みんなのおかげだしね!」

彩子はくるりと体を翻し、生徒達が応援している席へ向かって歩き出していった。

最高の笑顔で・・・





大会の帰り道、イワイと二人で歩く敏夫。

「いや~、今日の試合はほんとに素晴らしかったですよね敏夫さん。
ますます惚れ直しちゃったんじゃないですか? ははは」

「ええ、ほんとに素晴らしかった・・・勝負の勝ち負けって何なのか、
ちょっと考えてしまいましたよ」

「そうですね~。僕らがまだ辿り着いていない境地なんですかね~」

「ねえ、イワイさん」

「え?」

「イワイさんはどうして空手を続けているんですか?」

「ええ?どうしてって・・・」

「ボクらはどうして空手をやっているんでしょう?
いえ、不満があるわけじゃないんです。ただスゴく不思議な感じがして・・・
彩子先生に出会ったのも、こうしてイワイさんと知り合えたのも・・・
今、楽しくてしょうがないんです。
でもこれがいつまで続くのか時々不安になるんです。
・・・もっと言えばボクたちはどうして生きているんでしょうか?」

「敏夫さん、急にどうしちゃったんですか? まるで中学生みたいですよ。フフフ」

「ヘヘヘ、あの二人の試合を見てたらなんかいろいろ考えてしまって・・」

「理由って、必要ですか?
明日も彩子先生は道場に来て空手を教えてくれる。
敏夫さん、楽しみですよね。僕もです。それでいいじゃないですか。
・・・ほら、これを見てください」

イワイは立ち止まり、足下を指差した。

「明日の事を心配して生きているのは、どうやら僕たち人間だけのようです」

「・・・ああ、本当ですね」



二人の足下には、アスファルトの隙間から生える名もない雑草。
そこにひとつ、小さな花が力強く咲いていた。



〈おわり〉






勝手にエンディング・テーマ(笑)





最後までご愛読して下さいましてありがとうございました。



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コメント

  1. PPPHIVE | URL | -

    うぉ~っ!!(笑)

    とうとう完結ですか(ノ゜O゜)ノ 寂しいなぁ(泣)

    予想は何となくついた結果ですけどこれでいいんですよね。
    技の応酬での会話がまた…(泣)泣かせます。

    でもいつか第2部があることを期待して…待ってますよ
    間に地震があったりして本当に大変だったと思いますが……

    とにかくお疲れさまでした(^^ゞ

  2. runrun1006 | URL | -

    お、終わってしまった…

    遂に続きが読めると思っていたら、最終回でしたか(T_T)
    最後の試合のシーンは良いですね。好敵手であり、最大の理解者でもある相手にお互いに感謝の念を込めて打ち合う様が、浮かんでくるようでした。
    また次回作を期待しています( ´ ▽ ` )ノ
    完結、お疲れ様でした!

  3. poncho | URL | -

    ありがとうございました。

    楽しかったです。今度はニューヨーク編なんか読みたいですね。
    ありがとうございました。

  4. mtst | URL | -

    最終回ですか…

    毎回楽しく読ませて頂きました。
    ありがとうございます。

    >「明日の事を心配して生きているのは、どうやら僕たち人間だけのようです」
    この言葉が刺さりました。
    そして最後の小さな花はあの花ですね?

    ストーリーを考えるのは大変でしょうけど
    またいつか続編を読んでみたいです。

  5. JOH-T | URL | grtSt.jg

    最終回

    もう終わっちゃうの、というさびしさがあります。

    なんとなく予想してた通り、迎える2人の最終対決のシーン。
    あ~ちゃんがちょっとの差で勝負には勝つんですけど、この物語には勝ち負けは重要ではないですね。

    技で会話するという描写(おそらく数秒の出来事なんでしょうか)がドラマチックでした。

    エンディングがまた、きれいな終わり方ですね。アスファルトの花。

    心温まる話でした。ありがとうございました。

  6. おとわしゅな | URL | QFk3YRjk

    ああ

    あっという間に最終回ですか。
    最後のストーリーにふさわしい、緊張感溢れる描写は
    アツい少年漫画を想像させるのものでドキドキしてしまいました(^^;
    ロボッチさんの文章は相変わらず引き込むのが上手いですねぇ~♪

    毎回どこかしらでニヤニヤしてしまうのがデフォルトです(笑

    でもこれからまたアナザーストーリーが展開していくんですよね!?
    イワイさんの過去も気になりますし…
    ゆ○ちゃんにももっ活躍してもらいたいです(><)

    >二人の足下には、アスファルトの隙間から生える名もない雑草。
    そこにひとつ、小さな花が力強く咲いていた。

    ゆかちゃんのブログの写真を思い出してしまいましたv


  7. パフュ男 | URL | -

    なんと

    終わってしまったんですね。 でも、素晴らしい最終回でした。 二人の戦いは、予想以上に美しかったです。 最後は、やっぱりかしゆかのブログからですね。(笑)
    ありがとうございました。

  8. GAME-edge | URL | -

    祝!完結(かな?)

    楽しかったです。ありがとうございます。
    ロボトリアさんの物語は流れるような進み方で、あっという間に読めます。
    物語の中に一気に引き込まれます。

    また期待しちゃいますね~(笑。

  9. ちゃか | URL | -

    終わっちゃったああぁ

    映画並みの格闘シーンに
    グッと引き込まれてあっという間に読み終わりました^^

    すっごく面白かったです!!
    強さと優しさを追い求める彩子と綾香の姿勢は
    Perfumeの在り方そのものだと思います。

    ワイヤーアクション取り入れまくりで
    いつか映画化してほしいです、切実にwwww

    本当にお疲れ様でした^^

  10. ロボトリア | URL | -

    皆さん、コメントありがとうございます。

    まとめての返信で失礼いたします。

    >PPPHIVEさん
    寂しいと言ってもらえて嬉しいです。
    予想ついちゃいましたか(´⊆`*)
    まあ、ベタな展開ですが安心しますよね(笑)
    地震はホントに気持ちが折れました。
    なんとか続けられたのは皆さんのコメントのおかげです。
    第2部・・・思いついたら書きたいですね(^_^)


    >runrun1006さん
    ここらへんが潮時かと・・終わってホッとしました(笑)
    連載はやっぱりキツいですね。1話完結がいいっす(;^_^


    >ponchoさん
    楽しんでもらって良かったです。
    ニューヨーク編ですか? 行った事がないのでまずはロケハンですね(^^)


    >mtstさん
    そのセリフいいでしょ(^^)
    まあ、すべてはゆかちゃんブログのおかげなんですが。
    続編出来たらいいですね。ボクもまた彩子先生に会いたいです(笑)


    >JOH-Tさん
    もう終わっちゃうの、と言われるくらいで終わるのがいいですね。
    まだやってんの、と言われるのはちと辛いです(笑)
    読んで欲しい所を的確に押さえたコメントありがとうございます(^^)


    >おとわしゅなさん
    文章褒めてくれてありがとうございます。
    読みやすいと言われるのは嬉しいです。
    アナザーストーリーはあるかもわかりませんね。
    外伝という形で続けるかもしれませんw
    ゆ○ちゃんの出番は確かに少なめですね。3人満遍なく登場させるのは難しいです(笑)
    でも最後の場面は、あれですから(^^)


    >パフュ男さん
    美しい戦いと言ってもらえて嬉しいです!
    こちらこそ最後まで読んでくれてありがとうございます。


    >GAME-edgeさん
    流れるような進み方・・・きゃー、嬉しいっす(笑)
    こんなお話でも楽しんでもらえて良かったです。
    今度は短編でいきたいです(笑)


    >ちゃかさん
    ちゃかさんは連載当初から応援してくれましたね。
    ありがとうございます。ほんとに力になりました。
    豚もおだてりゃ木に昇ります(笑)
    Perfumeのイメージと合わせて理解してくれて嬉しいです(^^)

  11. セラミックおじさん | URL | -

    いまさらながらですが…

    まとめて読ませていただきました(感謝)
    精神様態が良い時に読もうと思っていたもので(笑)
    楽しみでもあり、少し怖くもありました。
    そして、読んでみてよかったと、今、実感しております。
    ロボトリアさん。いつか一緒に飲みましょうよ(願)

  12. ロボトリア | URL | -

    >セラミックおじさんさん

    コメントありがとうございます。

    ボクもこの間、気持ちが不安定で書き終えられるかわからず、
    投げ出してしまおうかとも思いました(笑)
    気に入ってくれれば幸いです。

    北海道にいきたいな~(^^)

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