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聖なる夜のものがたり

2010年11月24日 20:12

夜の町

久しぶりに妄想短編小説を書いてみました。
一話完結です。
よろしければどうぞ。

聖なる夜のものがたり


「ちっ、しけてやがんな」

枯れ葉舞うコンビニの駐車場で、男は住宅地図にまた×印を加えた。
良二。52歳。新聞勧誘の仕事は始めてまだ間もない。
リストラだ。
なんの実績も資格も持たない中年男に、
今の時代、まともな再就職口など、あるはずもなかった。
遅い昼食のおにぎりとコーヒーを胃に流し込んで、つぶやいた。

「また、明日がんばってみるか…」

疲れきった良二は、前かごに山積みにされた景品に目をやり、ため息をつくと、
原付にまたがり、家路へと急いだ。

いちばん安い物件を紹介してください…
そう注文して探し当てた築40年の木造アパート。

「ただいま…」

「あ、おとうちゃん、お帰り!」

来年、小学校へ入学を控えたひとり娘、美雪が元気な声で応えてくれた。
ふたり暮らし。
妻とは2年前に離婚した。
歳の離れた若い妻は、男をつくり家を出て行った。
誰のせいでもない。自分に甲斐性がなかった…
良二はそう思うことにした。

「また、ひとりで遊んでたのか」

「うん、ぱふゅーむごっこ」

あどけない笑顔で美雪は答えた。
この笑顔が良二の唯一の救いだ。
寂しさを紛らわすために良二は自分の持っていたPerfumeのDVDを
美雪に与えた。
美雪は夢中になった。
部屋にはポスターや雑誌の切り抜きが、あちこちに貼ってある。

美雪とは血がつながっていない。
妻の連れ子だった。
娘を引き取ることに妻は反対しなかった。

「かしいかです。あーちゃんです。のっちです…」

たったひとつのリカちゃん人形を、立ち位置を変えながら、美雪は演じさせた。

「さんにんあわせて、ぱふゅーむです!」

「Perfumeは好きかい?」

「うん!」

「どうして?」

「かわいくてね、かっこよくてね、そいでね…やさしいから」

見知らぬ土地に、逃げるようにやってきた二人には頼る人間もいなかった。

「おなか、すいただろ」

「うん!」

良二は、ありあわせの材料で夕食の支度をはじめた。


……


ぽつぽつと契約も取れるようなってきた頃には、冬も本番を迎え、
街にはイルミネーションがあふれていた。

「そうか、今日はクリスマスか…ケーキでも買っていってやるか」

良二は街頭売りのいちばん小さなケーキを買うと、
前かごに載せ、くるりと原付をターンさせた。

そのとき。

大きなクラクションの音とともに、
ヘッドライトの明かりが良二の顔を照らした。
ケーキは道路に飛び散った。


……


「おとうちゃん、遅いなー。ねー、のっち」

こたつに入って、ひとり遊びをしているうちに
いつしか美雪は眠ってしまった。



「美雪ちゃん」

「……ぇ?」

「美雪ちゃん、起きて…」

眠い目をこすりながら、美雪はふと見上げた。

「あ!」

「こんばんは。私たちPerfumeといいます。

今日は美雪ちゃんに会いにやってきちゃいました~」

「え~、ほんとう!」

「はい、まずはココアを召し上がれ」

適度にあったかいホットココアを美雪は冷えきった両手で
包み込むように受け取った。

「あったか~い」

3人に見守られながらゆっくりと飲み干すと、
胸の中心から温かさがじんわりと広がっていった。

「美雪ちゃん、外に出てみようか」

促されるように外にでて、空を見上げると、美雪は息を飲んだ。
大きな飛行船のような、宇宙船のような、見た事も無い飛行物体が空中に浮かんでいた。

飛行船

窓のようなところに人影をみつけた。
笑いながらこちらに向かって手をふっている。

「あ! おとうちゃん!」

「美雪ちゃん、今日はお父さんとふたり、ゆっくりと空の旅を楽しんでね」

そう言って、Perfumeの3人は美雪にそっと手をかざした。
美雪の背中に蝶のような羽が生え、フワリと体が浮いた。
そしてキラキラと光る粉を振りまきながら、空へと舞った。
やがて周囲は明るくなり、夜とは思えぬ光の洪水の中、
美雪は飛行船にたどり着いた。

「おお、美雪、よく来たな」

「おとうちゃん!」

ゆっくりと飛行船は進み始め、その高度を上げていった。
ぐんぐん、ぐんぐん。高く、高く。
眼下にみえる街並は、家々の灯りや明滅するイルミネーションに彩られ、天の川のようだった。

「わ~、きれい!」

「うん、きれいだな」

「あれ、美雪のおうちかな」

「うん、そうだよ」

「おとうちゃん」

「うん?」

「美雪ね、とっても幸せだよ……とっても」

「…そうか」


飛行船はふたりの幸福な気持ちに呼応するかのように、その放つ光を強めていった。


そう、まるで太陽のように。




光


……






















「美雪」









「美雪」



「美雪、起きなさい」

「…ん、うん……え?」

「こたつで寝てちゃだめじゃないか。風邪ひくぞ」

「おとうちゃん?」

「なんだ、寝ぼけているのか。
おとうちゃん、ケーキを買い直しに行ってたら遅くなってしまったんだ。
悪かったな。ごめんな。」

「ううん、大丈夫。…あのね、美雪ね、ぱふゅーむのおねえちゃんたちに会ったよ」

「え~、そうか、それはよかったなあ。さあ、ケーキを食べよう」

美雪はケーキにむさぼりついた。
気がつけば腹ぺこだった。

「おいしいかい?」

「うん!」

「そうか。ゆっくりお食べ」

「うん。…あのね、おとうちゃん」

「うん?」

「美雪ね、とっても幸せだよ……とっても」

「…そうか、おとうちゃんも幸せだ」

「ほんとう!」

「ああ、幸せだ。ほんとうに…」

良二はそれ以上言葉が続かなかった。



夜になると気温はグンと冷え込み、

やがて、この冬初めての、美しい粉雪が、闇に舞い踊った。






おわり。











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コメント

  1. おとわしゅな | URL | QFk3YRjk

    ドキドキ

    途中まで読んで「うわ~…この流れ…」と思って
    ドキドキしてしまいましたが、平穏に物語が終わって安心しました(^^;

    Perfumeの3人はちいさい子供にも大きな夢を与えてくれるんでしょうね。
    (もちろん疲れたおじさんにも…w)

    冬になると、やっぱりTSPSを連想しますね~
    私も偶然ネタにしたので記事を読んだときはびっくりしました(^^

  2. PPPHIVE | URL | -

    うわわ

    人が悪いんだから、もう。
    ハッピーエンドで良かったあ~(^^)

    みんな待ってるんですよね、TSPSを(笑)
    最近寒くなってきたのでピッタリです。
    いつまでも待ちますよ、はい、僕は。
    紅白で歌う予定なので(ウソ)

  3. mtst | URL | -

    あか~ん

    ロボトリアさん 。
    泣けます。
    泣けますって~。
    こんなん反則ですって~(泣笑)

  4. runrun1006 | URL | -

    以前に読んだ

    妄想小説のようなちょっとダークな感じの主人公のお話かなと思ったのですが、
    女の子が可愛くて心温まるお話で良かったです(笑)
    私は信じてましたよ。ロボトリアさんは不幸な結末にはしないって。
    って、思いつつもドキドキしましたよ<(@^_^@)

  5. yossy | URL | -

    もうすぐ

    冬。温かさと優しさが恋しい季節ですね。
    こんな心のほっとする物語が、
    ひび割れた指の先から染み込んで
    胸の奥に明かりを点してくれます。
    3人の笑顔みたいに。
    温かいお話、有り難うございました。

  6. ロボトリア | URL | -

    > おとわしゅなさん

    コメントありがとうございます。

    最近はお子さんのファンが増えていますよね。
    そんな事から妄想してみました。
    あと、コンビニの前で何か立ち食いしている、勧誘員っぽい人を見かけたんです。
    家に来たら邪見に追い返すけど、この人にもドラマがあるんだろうなあと思ったのも
    ひとつのきっかけです。

    TSPS、久々にPV見たら、なんか新鮮でした~。CGもいいですね。
    やはりシンクロしちゃいましたね(^_^)v

  7. きなこ | URL | -

    ほんとにロボさんって知的ですね
    いや~この文章、なかなかかけませんよ。

    私はすっかり劇レア企画に当選したのかと思いました!
    もっと(?)夢がある展開でしたね^^

    なんか・・携帯小説ならぬブログ小説なんてどうです?
    コアファンつきそう!

  8. セラミックおじさん | URL | -

    すでにコアなファンガここにいます

    感想に代えて…http://www.youtube.com/watch?v=hqhLPN82hig
    つくちゃいました

  9. ロボトリア | URL | -

    > PPPHIVEさん

    コメントありがとうございます。

    ハラハラしました? 成功です(笑)
    紅白でTSPS。なんと、かっこいいんでしょう。
    Mステでシティやったんですから、アリでしょう!

  10. ロボトリア | URL | -

    > mtstさん

    コメントありがとうございます。

    はい、ハンカチ(笑)
    WOW WOW放送後で盛り上がっている所、
    全部読んでいただけたでけでも嬉しいです。
    なんか自分一人浮いている気がします……(;^_^

  11. ロボトリア | URL | -

    > runrun1006さん

    コメントありがとうございます。

    信じてくれてありがとうございます。
    途中で終わらそうと思えば出来たんでしょうけど、
    やっぱり、あまりにもあれなんで。フ○○○○スの犬は苦手です(笑)

  12. ロボトリア | URL | -

    > yossyさん

    コメントありがとうございます。

    この記事を書き上げた昨日からぐっと寒くなりましたね。
    こんな拙いお話しで温かい気持ちのなってくれたら幸いです。
    美しいコメントありがとうございました。

  13. ロボトリア | URL | -

    > きなこさん

    コメントありがとうございます。

    わたくし、いたってボンクラなパッパラパーでございます。
    しかしパフュブログ界隈には知的な方が多く、恐れおののいております(笑)
    拙い文章を褒めていただき嬉しいです(^^)

    こんな激レア企画ボクも当選したいですね。でももっと3人と一緒にいたいです(キモ)

    こんな拙いお話しでもたま~にしか思いつきません。量産は無理ですね。
    でも嫌いではないので、また思いついたら書きますので是非読んでいただけたらと思います。

  14. ロボトリア | URL | -

    > セラミックおじさんさん

    おわ~、またまたありがとうございます!!
    アパートと町の夕景がイメージとぴったりです。
    ボクの脳内のぞきました?

  15. electrocat | URL | Aiam0OL6

    これは

    夢じゃなかったんですよね?
    奇跡が起きたんですよね?
    聖なる夜だから、Perfumeが2人の幸せを守ってくれた・・・

    奇跡を起こしてきた彼女たちだからこそ、こういう話がおとぎ話じゃなくなる。
    そんな彼女たちの魅力がとてもよく表現されてて、感動しました~(T_T)

  16. ロボトリア | URL | -

    > electrocatさん

    コメントありがとうございます。

    聖なる夜の奇跡。
    信じるか信じないかは…アナタしだい(笑)

    翌朝、アパートの玄関には、ココアのマグカップが……

  17. Perfumer | URL | -

    わ…

    >翌朝、アパートの玄関には、ココアのマグカップが……
    こういうの反則ですわー
    折角耐えれてたのに…(笑)
    (↑ベタなオチにやられる弱い自分www)


    僕的に各セリフを言ったのは

    か「こんばんは。私たちPerfumeといいます。」
    あ「はい、まずはココアを召し上がれ」
    の「美雪ちゃん、外に出てみようか」
    あ「美雪ちゃん、今日はお父さんとふたり、ゆっくりと空の旅を楽しんでね」

    っていう風に聞こえます(^_^)
    まぁあえて決めない方がいいかも知れませんけどね。

  18. ロボトリア | URL | -

    > Perfumerさん

    コメントありがとうございます。

    耐えなくてもいいんですよ。はい、ハンカチ(笑)

    お、セリフ想像してくれたんですね。いい感じです(^^)
    特に正解は決めてなかったのですが…
    のっちが異常にはまってます! 声が聞こえてきますね~。ボクも言われたいです。キモッ

  19. GAME-edge | URL | -

    今は勘弁して

    先程WOWOW(ごめんなさいロボトリアさん見れなかったですね)見終わったばかりなんですよ。不用意にココへ来るんじゃなかった。ただでさえ感無量になってるのに(涙溢。
    いつもながら素敵で一気に読ませてくれますね。
    ありがとうございます。

  20. ロボトリア | URL | -

    > GAME-edgeさん

    コメントありがとうございます。

    WOWOW堪能されたようで、ボクもとても嬉しいですよ。
    スゴいですよねPerfume。つべで少し見ましたが現場とはまた違う迫力で
    まったく別物を見ているようです。ボクは掟も入ったDVDまでおとなしく待ちますよ(笑)

    はい、ハンカチ(笑)

  21. ngo900jp | URL | Zzi9DAjw

    TSPS!

    TSPSの歌詞と、PVの雰囲気を壊すことなく、ファンタジーに編み上げるという。季節感も含め、お見事です。

    Perfumeはこういう気持ちを与えてくれているというのは現実でもあるのがすごいところです。

    TVでTSPS、是非みたいですね。できればこの季節に。

  22. ロボトリア | URL | -

    > ngo900jpさん

    コメントありがとうございます。

    PVからのイメージである事を掬いとっていただき嬉しいです(^^)
    このPVは様々な物語を連想させてくれます。
    もちろんPerfumeのキャラクターがあってこそですが…

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