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「サンシャイン日本海」サイドストーリー(妄想)

2014年10月21日 20:35

一昔前なら、長年連絡の途絶えた人との関係は、
ぷっつりそのまま、という場合も多かっただろう。


とあるSNSを通じて高校時代の旧友、古田康男から連絡を受けたのが数週間前の6月。
私は今、およそ30年ぶりとなる同窓会に出席するために、
新潟行きの新幹線に乗っている。

上京して都内の大学に入学し、
そのまま東京の会社に就職した私は転居を重ねたこともあり、
いつしか同窓会の通知も来なくなっていた。
「今更同窓会なんて…」半ばそんな気持ちもあったが、
旧友の古田が「久しぶりに顔が見たい」と言うので、重い腰を動かしたのだ。
最近は仕事もうまく回らず、空回りばかり感じる。
マスコミは景気回復を伝えるが、どこの世界の話かと思う。
将来の展望を考えると、悪い材料しか見当たらず、
鬱々と過ごす日々が続く中、気分転換にでもなれば…とも思っていた。


新潟駅。
地方都市特有の、大きなターミナル駅の佇まいは昔から変わっていない。
行き交う人々はどこかへ旅立っていくのか。
あるいは帰ってきたのか。


駅からは古町方面へ歩いていく。
万代橋を渡る頃には額に汗がにじんできた。
初夏の日差しはもうかなりキツい。
「バスにするべきだったかな…」
大通りに面した商店街は、かなり面構えが変わっているように見えた。
しかし少し路地を覗いてみると、昔見慣れた風景がそこかしこに存在している。
「こんなに小さな空間だったかな…」

ほどなくすると会場の小さなホテルに着いた。
受付を済ますと、中ではすでに級友たちが歓談していた。
同窓会会場は、立食パーティ形式。
「弱ったな。誰が誰だか…」
手持ちぶさたにしていると、人なつっこい笑顔の男が近づいてきた。
「おーい新田。陽一だろう? ひさしぶりだなあ」
「おお、古田…か? 変わったなあ」
「ははは、それを言うなよ。お互い様だろ」


古田は高校を出た後、地元の建設会社に就職した。
今では商店街のちょっとした顔でもあるらしい。
古田は会うなり、近況をまくしたてた。
不景気の波は東京の比ではない。
高齢化、財政難、シャッター街…様々な問題を抱えている。
こうした同窓会も東京に散って行った人間を呼び寄せて、
情報交換をするという意味合いもあるのだと言っていた。


「いやー、陽一。ようやく見つけた時は嬉しかったよ。たまには帰ってこいよ」
「うん、ああ」
「ところでおまえに会いたがってるやつがいるんだけど」
「え? おれに?」
「ああ。妹の菜美。覚えてる?」
「あー、菜美ちゃん。もちろんおぼえてるよ。懐かしいなあ」
「あいつもいろいろあってさ、バツイチよ、バツイチ。
今、高校生と中学生の子ども、ひとりで面倒みてる」
「へー、そうなんだ」
「おーい。菜美!」
古田が受付に向かって声をかける。
(え、あの受付にいたのが…全然気がつかなかった)

おずおずと菜美ちゃんがこちらにやってきた。

「陽一くん久しぶり。どうして気付いてくれなかったの? もう…
わたしはすぐにわかったよ!」

「ごめんごめん。来ているとは思わなかったから…」


菜美ちゃん。
昔、古田と一緒に遊んでいた頃、よく一緒について来ていたっけ。
あの頃はたしか彼女は小学生くらい。
ボーイッシュなショートカットで、性格も明るく活発。
川べりで蛍を追いかけまわしたり、
古田の家の縁側でスイカを食べたり。
同年代の女の子と遊ぶより面白かったのだろう。
ヒマワリ畑を駆け回る菜美ちゃんの姿が眼に浮かんだ。
3人で海に行ったこともあったっけ…


すっかり大人になった菜美ちゃん。
もう「ちゃん」と呼ぶのもはばかられる、言っちゃ悪いがいい歳だ。
歳相応のシワもある。
昔と変わらぬ明るい笑顔の奥に、憂いを含めた陰影が今は見てとれる。

「久しぶりだねえ、菜美ちゃん。元気でやってるの?」
「うん、まあね」

「陽一、おれちょっと他のやつと話してくるから、菜美頼むよ」

「え、あ、おい!…ったく、相変わらずせわしないヤツだぜ」
「ふふふ、お兄ちゃん、あれでもいろいろと忙しいのよ。
そういえば昔もこんなことあったよね」
「こんなこと?」
「ほら、あの夏まつりの縁日のときも…」
「ああ!」

思い出した。

東京の会社に就職してまもなく、法事で帰郷したときだった。
古田と夜の縁日で落ち合う予定だったのが、あの時も急な仕事が入ったからと、
なぜか菜美ちゃんだけ、一人で現れたのだった。
その時も数年ぶりの再開だった。
大学生になった菜美ちゃん。昔の印象とはまるで変わっていてどぎまぎした。
青い、花柄の浴衣を着ていた。
髪を上げ、あらわになった首筋が細い。

「こんにちは…あの、お兄ちゃん急に来れなくなって…」
「そうみたいだね。まあ、あれだね…」

何があれなのか。その後の記憶はほとんどない。
ただ、一緒に縁日をすごした菜美ちゃんの美しさの断片だけが、脳裏に焼き付いている。


「ふふ、あの時の陽一くん、すごい緊張してたよね」
「そうかな。だって菜美ちゃんがあんまりキレイになってたから」
「あら、おじょうずね。でもそのセリフ、その時聴きたかったなー」
「ばか、からかうなよ。……いろいろ苦労したんだって?」
「うん、まあね。それほどでもないけど。子どもたちの笑顔が救いかな」
「そう。がんばってるんだ」
「男運がないのかな、わたし。ははは」
「菜美ちゃんをそんな目に合わせるなんて許せないなあ」
「またー、そんな。…わたし陽一くんと結婚すればよかったのかな…」
「え!」
「へへへ、冗談冗談♪」

その時の菜美ちゃんの横顔は、笑っていなかった。

「でもね、ずっと待ってたとこあるかも、わたし…」

「…」

「なーんてね! さ、ビールでも飲も! あ、日本酒がいいかな?
こっちのお酒美味しいんだから」


それからひとしきり、古田も交え、私たちは昔話に花を咲かせた。
何十年もの時空を、一気に飛び超えたような幸せなひとときだった。
皆が今を忘れ、昔の甘美な思い出に浸っている。


菜美ちゃんは子どもたちが待っているからと、少し早めに帰っていった。

私も新幹線最終に飛び乗り、東京へ。

「なんだか疲れたな…でも心地いい疲れだ…」

リクライニングのシートを倒し、目をつぶる。


するとなぜか、きらめく日本海の光景が広がった。

美しい砂浜と夕日の、あの懐かしい日本海…






(おわり)







※これは、Negiccoの名曲「サンシャイン日本海」に触発されて書いた、
筆者の勝手な妄想によるサイドストーリーです。実在の人物とは一切関係がありません(ペコリ)。








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